INTERVIEW

小さいからこそできることもある。どういう戦略でいくか

障害者ドットコム株式会社
川田祐一社長

障害者ドットコム株式会社 川田祐一社長

介護施設の現場・運営経験を経て、2015年に起業。「自己実現できる障害者を増やす」を理念に、障害のある方の「働く」「暮らす」を応援する検索サイト「障害者.com」を運営する。

「障害者.COM」での起業

現場経験と経営能力と

僕はVRに興味があるのですが、福祉と掛け合わせることで人の役に立つことができないかと考えています。それで川田社長のお話をぜひお伺いしたく、取材をお願いしました。早速ですが、社長はどういう想いをもって起業されたのでしょうか。


川田社長

僕も早稲田さんと同じで何か世の中の役に立ちたいというのがあって、今まで誰もやってないこと、面白いことをやりたいと思っていました。ネットを使った事業がいいと思っていたので最初は障害者施設の検索サイトをやろうと。食べログやSUMOの障害者施設版ですね。

起業される前はどんなことをされていたんですか?


川田社長

前職も経営役員、実質的な責任者として障害者施設を12カ所運営していました。最初は順調でしたがどんどん競合が増えていく中でうまくいかなくなってしまいました。

うまくいかなくなった具体的な原因、課題はどこにあったんでしょうか。


川田社長

自分の経営に対する意識の甘さ、勉強不足もあったと思います。もともと現場の人間で経営には未熟だった。10年前は障害者福祉自体があまり注目されていなくて、何もしなくても来てもらえたんです。競合が増えた今は営業しても来てもらうのは難しい。現場を知っていることはもちろんですが、起業するなら経営についての知識、認識、手腕も必要です。

マネタイズは将来的に

ここ10年で急激に増えたということですね。障害者ドットコムさんはどのような形で収益を上げられているんでしょうか。


川田社長

うちは障害者の方の相談支援をしています。ドットコムの方は実はまだマネタイズできていないんです。将来的にはマネタイズできる仕組みを、と思っていますが、それだけの価値がないとできないわけで、このサイトの価値をいかにつくっていくかというのが課題ですね。

あと、マネタイズできないから競合が少ないというのもあるのですぐにお金が稼げるのが本当にいいか、というのもあるんですよね。儲かって誰でもできるなら競合が増える。

サイトを拝見すると、毎日記事が追加されていますね。


川田社長

そうですね。毎日2記事ベースで発信しています。

ライティングも障害者の方にお願いしているんですが、当事者が毎日発信しているサイトってかなり少ないです。ほとんどないんじゃないかな。それが強みだと思っています。

起業にあたって

いきなり起業か、まずは就職か

起業する前にはどのような行動をとられましたか?


川田社長

まずは資金面。顧問税理士さんからの紹介を受けて国金(日本政策金融公庫)から資金を借り入れしました。前職でもなんとなく経営のスキーム、やらなければいけないことは掴んでいたのでそれを実行していった感じですかね。役所に行ったり税務署に行ったり。ひとりではじめるなら全部自分でやらないといけません。

大変ですね。強い想いがないとできないですよね。


川田社長

一つひとつこなしていくだけなので知識があればそんなには難しくないと思いますよ。早稲田さんは今、経営の勉強もされているんですか?

そのあたりの知識が全然なくてどう勉強したらいいのか…。一度就職した方がいいのか、このまま今の気持ちで起業した方がいいのか悩んでいるんです。どう思われますか?


川田社長

一般論でいうと組織で勉強した方がいいとは思いますけど、最近は中高生で起業して成功している人もいるくらいですからね。年齢とか経験は関係ないのかなと思います。

インターンはされたんですか?

インターンはいろんなところに行きました。僕は中国出身で国と国をつなげる仕事がしたいと思っていたので商社に絞っていたんです。でも本当にやりたいことはそうじゃなかった。介護とVRを掛け合わせて人の役に立ちたいと思って方向を変えました。


川田社長

そうですか。掛け合わせってすごく大事だと思いますよ。

ベンチャー支援を活用する

VRと今の仕事の関連性はあると思いますか?


川田社長

あると思いますが正直あまり詳しくないです。VRって実際、何ができるんですか?

介護体験もできますし、介護する側がされる側の気持ちになれるというのもあります。あとは勉強の一環として映像を見たり環境の中に入ったり。


川田社長

eラーニングの次世代版ですか?

そうですね。僕の祖父は中国から日本に来て日本で亡くなったんですが、最期まで中国に帰りたいと言っていて…中国の景色をテレビ電話で見せあげたんです。あのときVRがあれば故郷に帰らせてあげられたなという思いがありまして。
介護だけじゃなく障害者の方にとっても有益な使い方があるんじゃないかなと思います。


川田社長

なかなか難しいですよね。お金のある大手が参入すれば一気にやられてしまいますから。でも今の段階でほかが完成させてないなら急いでやれば可能性はあるんじゃないですかね。

お金がある大企業に対してどうやったら一歩先にいけるんでしょうか。


川田社長

難しいけど、小さいからこそできることもあると思いますよ。どういう戦略でいくかですよね。

立命館からベンチャー、スタートアップがいっぱい出ていますよね。おそらく関西でいちばん多いんじゃないですか?先輩をあたってみるのもいいんじゃないでしょうか、スタートアップをしている会社とか支援している団体とか。僕はベンチャーを支援しているところを探したりしました。大阪府や大阪市も支援をしていてプログラムも実施していますよ。

起業後の課題

「この人と仕事をしたい」という感覚

社長は人、モノ、金、の中でどれがいちばん大切とお考えですか?


川田社長

いちばんは人じゃないですかね。人が中心。

人脈はどのように作られていますか?


川田社長

知り合いの紹介が多いです。いい社長の傍にはいい人が絶対にいます。一緒にやりたい人かどうかは会えば分かります。一緒に仕事をしたいと思えるかどうか、誠実さがあるかどうか、一緒にいて楽しくなるような人か。そういう感覚ってすごく大事ですね。

なるほど。では、必要な情報はどこで得られていますか。


川田社長

ネットですよね、「NewsPicks」とか。情報はどんどん取りにいきます、自分のやりたい事業に関係あることは特に。テレビ大阪は見られますか?ビジネスニュース、経済系の番組が多いので僕はよく見ています。

そうなんですね、見てみます!


川田社長

あと、僕はみなさんみたいに若くないので若い人以上にトレンドは気にしています。遅れてしまわないように新しいことはどんどん試す。世の中がどうなっているのかを知るってことですね。

会社をどうしていきたいか

人工知能についてはどう思われますか?


川田社長

正直、まだそこまで考えられてないですね。福祉事業って他の業界に比べて遅いと思います。僕自身もAIまでは考えられてない。ただ、AIで代われるものはなくなっていくと思うので「人じゃないとできないことは何か」っていうのは考えています。どんどん進んでいくと「人間は何のために生きていくのか」っていうところに行き着いてしまう…大変な時代ですよね。

今、御社で抱えられている課題はありますか?


川田社長

いっぱいありますけどね。難しいですね。何を目指したらいいのか、っていうのに迷っているのが課題ですかね。会社が大きくなればうれしいですが、大きくすることがすべてでもない。

大きくすること自体が目的ではないってことですよね。
では、社長の強みはどんなところですか


川田社長

ポジティブに判断してやっていくところですかね。正直、起業してもしなくても給料は一緒。でも将来きっと役に立つと思って立ち上げたんです。

僕は雇われのときから自分が経営者だと思って仕事をしていました。たとえ雇われでも経営者のつもりでやる、っていうのはすごく大事。そうでないと成長しないと思うんです。

僕を含めて、そういった主体性はあるけど何をやりたいか分からない人ってすごく多いと思うんですが、そういう学生にどんなチャレンジをさせたいですか。


川田社長

とりあえず思ったことを形にすることですよね。形にしないとはじまらない。

御社でチャレンジするとしたら


川田社長

障害者ドットコムのPVを10倍にするとか?今は10万PVくらいですが、100万いかないと価値はないと思うんですね。

なるほど。僕もこれからいろんなチャレンジをしていきたいと思っています。今日はどうもありがとうございました。

インタビュアー

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)

中国で7年間を過ごした後、日本の高校・大学へ進学。VRを福祉に生かす事業で起業するのが夢。