インタビュー

INTERVIEW
2019.03.27

サラリーマン経験で得たものは大きい。一度就職してみる、というのも手

株式会社モノビット 本城 嘉太郎社長
サラリーマン経験で得たものは大きい。一度就職してみる、というのも手

起業するまでのこと

勤めながらの起業準備

本日は東京と神戸をつないでオンライン取材をさせていただきます。よろしくお願いします。

本城社長

よろしくお願いします。

まずは起業のきっかけを教えていただけますか?

本城社長

はい。僕は昔からオンラインゲームが好きなんですが20年前はほとんど世の中になくて、初期のオンラインゲーム「DIABLO(ディアブロ)」に出会ってすごい衝撃を受けたんです。
当時最先端のゲーマーを自称する僕でもこんなに面白いと思えるゲームなのに、世の中のほとんどの人が知らない。この楽しさをみんなが味わったらすごいなぁって。その頃日本ではあまりオンラインゲームを作っていなくてほとんど韓国から買っていたので、自分で作りたいと思ったのがきっかけです。

起業するためにどんな行動をとられましたか?

本城社長

自分で会社を作ろうと思ったのが26歳くらい。その時まではゲーム開発会社のエンジニアとして現場でいろんな技術を学んでいたんですが、会社を作るまでの1年半はひたすら貯金をしつつ、会社の経営とか営業とか組織の本なんかを乱読しましたね。

その時面白かった本はというと、神田昌典さんの「成功者の告白」という本です。0から起業してトラブルを抱えながらも成長していく様が小説として書かれている本。起業すればいろんなことが起こる、その心構えとして読んでおいてよかった本ですね。

あとはサイバーエージェントの藤田晋さんの「渋谷ではたらく社長の告白」だったかな。これも起業して成功するまでのところが書かれているんですが、参考になったというか、藤田さんでもこういう失敗するんだなぁ、と背中を押してもらえました。

あとは財務系で、岡本吏郎さんの「会社にお金が残らない本当の理由」でしょうか。このあたりの本が実践的で役に立ちましたね。経営していると当たり前だけど0から始めるには役に立つ情報でした。

なるほど、僕もぜひ読ませていただきます。そういった本での勉強にどれくらい時間をかけられましたか?

本城社長

もともとエンジニアなので技術書は月に何冊かは読んでいたので、読むジャンルを変えたという感じですけど、何冊くらいかな…数十冊は読みましたかね。

東京か、地方か

起業の前後でどのような苦労がありましたか?

本城社長

もともとサラリーマンが向いていなかったので、どちらかというと起業する前の方がストレスはあったと思います。仕事のしすぎで眠れなかったり、コーヒーの飲み過ぎで胃炎になり、コーヒー自体が飲めなくなったり…。だから東京に来て起業して解放された感じがありました。毎日11時間眠れて、コーヒーも飲めるようになった。逆にストレスがない感じです。

東京に行かれたのはなぜですか?東京じゃないとダメな理由がありますか?

本城社長

日本の構造上、本社が東京にある会社が圧倒的に多いんです。大手のメーカーとつながりをもちたいと思ったら本社のキーマンと話をするのがいちばん早い。メディアの中心も東京にあるのですぐに来てもらって話ができる。ビジネスをする上での難易度は東京の方が圧倒的に低い、という判断でこちらに来ました。

なるほど。それは昔と今とで変わらないものでしょうか。

本城社長

変わらないですね。逆に地方だからこそできるビジネスもあると思いますが、IT系であれば東京の方がいいと思います。国内でビジネスするなら東京が最強、海外を狙うなら場所はそんなに関係ないかなと思います。
東京って近いところに需要があるのであえて海外にいかなくてもまわっちゃうんですよね。たとえば韓国は国内の市場が日本の1/3くらいしかないからはじめから海外狙いでいく。世界を狙うなら東京である必要は全然ないと思います

起業に必要な力

次の質問をさせていただきます。人、モノ、金、の中で社長はどれがいちばん大切だと思いますか?

本城社長

そうですねぇ…それは業種によると思います。人に依存する業種、うちのようなゲーム制作なら圧倒的に人です。うちは職人の集まりで、それぞれの属人的な力を組み合わせてモノを作るから圧倒的に人がやはり大切です。ベンチャーならほとんど人じゃないですかね。ただ、ベンチャーでもいきなり大きなことをしたいと思ったらお金が必要になりますよね。
まぁでも第一には「人」が大切だとおもいます。

あと、僕はこの3つ以外に情報とか戦略とかいうのも欠かせないものに入ると思っていて、いちばん最初にどういうポジションで会社を始めるかという情報収集能力と戦略立案能力っていうのもすごく大事だと思いますね。今でもそう思います。
たとえばメルカリ。最初から億単位のお金を使って優秀な人材を集めてきて、フリマアプリというプロダクトに絞ってスタートし、世界展開しています。そういった戦略があって成功している。戦略がないまま起業してドサ周りするパターンって案外多いんですよ。

戦略を考えすぎるとスピードが遅くなるといったジレンマはありませんか?

本城社長

確かにありますね。まわりを見ても考えすぎて動けていない人が圧倒的に多い。とはいえ、起業って日本では失敗するとダメージが大きいですよね。ほぼ自己破産になるとか。
メルカリの山田さんのように何回か起業して成功している人は会社をイグジットしている。そういった「まわす能力」もある人とない人とがいます。戦略も大事ですが、能力や運も必要となることなので、なんでもかんでも起業すればいいわけじゃないんです。

会社の成長

企業規模

会社をまわすコツというのはありますか?

本城社長

うーん、いろんな業種・会社があるけど…僕はもともとエンジニアで数字に強く、かつ開発力という比較的マネタイズしやすい力はもっていました。さらに起業した「ゲームの開発会社(デベロッパー)」は業種的にもマイナスがない業種なんです。ゲーム業界の中でも、パブリッシャーをしている企業のように当たると天国外れたら地獄といったことはなく、開発会社は真ん中にいる。パブリッシャーは開発費や広告費を何億円もかけて、外れたら倒産してしまう業界でもあります。

半分ギャンブルみたいなところがあるんですかね。

本城社長

業種によりますね。ゲーム業界の中でもさらに細分化されて、ギャンブルに近いところもあると思います。でも今思うのは、会社が大きくなったら幸せというわけでもないし、使いきれないお金があっても仕方ないなということ。起業すると、扱う金額も大きくなって、ある程度サラリーマンの頃より稼げるようになると思います。そこで止める勇気があるかどうかも大事です。行動力のある人ってビルゲイツを越えようとかザッカーバーグになろうとか難易度を上げていく。あえて社員は50名、年商5億円くらいで自分もそこそこの給与がもらえて、社員にもしっかり給料を払えたらいい、くらいの所がいちばん難易度もちょうど良く、バランスがいい気がします。

なるほど。

本城社長

社員が30名を超えるとマネジメントする人が必要になります。でもこのマネジメント層の育成や管理がいちばん難しいんですよ。社員が30名以下で全部自分がマネジメントするのがいちばんやりがいもあって楽しいんじゃないかなと思いますね。

規模拡大に必要な能力

社長には目標とする経営者がいますか?

本城社長

特に目標とする個人はいないですね。それぞれみなさん素晴らしいところがあるので。松下幸之助さんも藤田さんもすごく伝説的、孫さんもすごい。でも誰かひとり目標というわけでもないです。
逆にダメなのは会社を潰す人ですね。経営者って会社を維持させるプロなので、潰しちゃう人は経営者としてダメだと思いますね。すごく性格が良くてもダメにする人もいるし、性格が悪くてもちゃんとまわしている人もいる。経営のスキルはそんなに人格に依存しないものかもしれないですね。社員が生き生きと働いて給料をもらえていることが第一。だからちゃんと利益を出して給料を払えるのが最低限で、それができない人は経営者としてダメだと思います。

分かりました。では次に、これまでの失敗談があればお伺いしてもよろしいでしょうか?

本城社長

失敗というか、起業してみてから自分にそのスキルがなかったなと気づいたのはマネジメントのところですね。先ほどもお話ししたように、社員を30名以上に増やそうとすると中間マネジメント層の育成が必要になりますが、そこに対する指導や権限委譲ができてなかった。
30名を超えると自分が直接指導してない人たちに働いてもらうことになるんです。そうするとこの中間の人たちが柱になる。だからこの人たちを束ねるというのがとても大事になってきますがそこのスキルは現場でスタッフとしてで働いているときにはできない経験なんですよね。一気に人事とか心理学、経営、教育の話になる。それって普通の人は専門外ですよね。でもそこのスキルをもっていないと規模を大きくするのは難しいと痛感しました。

起業を目指すなら

大学か専門学校か

僕の甥もプログラミングに興味をもっているんですが、彼は今18歳で大学受験を控えています。ゲーム開発の仕事に携わりたいとしたらどういう学校に進むべきでしょうか。

本城社長

ゲーム会社に就職しやすいのは大学でいうと情報学系が多いですね、C言語などでゲームを作れるところです。ただうちは専門学校から採用することが多いですね。関西なら神戸電子とかECCとかHALなどでしょうか。

大学じゃない理由ってあるんでしょうか?

本城社長

大学は幅広く学びますが…ゲームの制作技術は今、覚えなきゃいけないことが相当多いんですよね。それを学生時代に学ばずに情報処理や基礎だけ覚えてきた人に0から教えようとすると数年かかるので、それよりは専門学校で、できたら4年くらいかけてサーバからグラフィックから全部一通り学んできて、しかもプログラミングスキルもある程度つけてきたっていう人の方が助かるなと。

プログラマーは専門学校、プランナーは専門学校である必要ないという理解でいいですか?

本城社長

そうですね。プランナーは逆に大卒を採用することが多いですね。プランナーって地頭が良くないと、というところで、学歴で地頭の良さを測るのは分かりやすい話じゃないですか。

そうですね。僕は立命館なんですが、このプロジェクトで京大生と関わることが多くて彼らの賢さを実感しています。

本城社長

それいうと僕も大学1年で辞めていますしね。プログラムも独学で勉強してきました。人それぞれだと思いますよ。分かりやすく採用しようとすると分かりやすい指標にすがりたくなる、という話です。

どの規模の会社を選ぶ

なるほど。では今抱えられている課題はありますか?

本城社長

課題。なんでしょうね…。

今うちは大きくなっている最中で、グループ全体で120名前後。30名のときは一人ひとり顔が分かって直接指導できたので自分の思い通りの組織にできました。それが100名近くなると対話ができなくなり、文化的には少しゆるくなったなという風に感じています。すごく悪くなったというわけじゃなくて…大きくなればなるほど待遇もよくなっていい条件で仕事ができるようになりますが、おそらく10名、20名のときに入ってくれた学生の方が成長したなとは思いますね。今は失敗させないようにしようという仕組みが出来てしまっているので、勢いはうすまってしまったかなぁ。

経験を積むなら20人未満の会社に入るのはいいことなのでしょうか。

本城社長

そうですね、その規模だと、普通は新人に任せないだろうという仕事を任せられるので、めちゃくちゃ苦労もするけどその分成長できる。社長の家に入るようなものなので、会社のカラーなんかの影響は強いですね。

サラリーマン経験の大切さ
本城社長

僕は19歳から2社、7年間のサラリーマン経験をした後に会社を作ったので、今思うと、社会人としての常識などは教え込まれていました。それで社会に出てからもあまり恥ずかしいことはなかった。
でも、20歳くらいで起業した子たちの常識のなさっていうのは結構かわいそうだなと感じることも多いです。社会人としての最低限のプロトコルとか、あるんですよ。例えば、会食でのマナーとかね。ビールのラベルが上とかそういう話じゃないですよ。相手に時間をもらうということは自分もそれだけの価値を提供しないともう会ってもらえなくなるじゃないですか。せっかく会うからには、こういう話をお土産としてもって行こうとか、どこの席に座っていただくか、しゃべる量なんかもそうです。若い社長と会って、「この子めっちゃかわいそう、言ってあげようかな」と思う。社長が若すぎるというのはそういうデメリットもあります。それを自覚していて、おじさんを右に据えて指導してもらっているような人はまだましですが、若い人しかいない会社は教えてくれる人がいないので、ビジネスマナーの面で成長しない気がします。

そういう意味では、最初は中規模のそこそこの会社に就職して2、3年叩き込んでもらうというのはとてもいいことだと経験からも思います。わざわざ時間を使って、お金を払いながらビジネスのマナーや一般常識を教えてくれるのって日本の企業しかないですから。

そうですか。考えさせられます。
この「CEOmake」には主体性の強いメンバーが多いんですが、そういう人にチャレンジさせたいことはありますか?

本城社長

うちは職人の集まりで、専門分野を持ち、技術を長年かけて蓄積していこうという会社でもあるし、ゲーム開発というのは期間も関わる人数も大規模になるので、なんでも若手に任せてみよう!とはなりにくい部分はあります。そういう意味でいうとサイバーエージェントのような会社の方がいいかもしれないですね。
ただ当社でも新規性の高い分野には積極的なんですが、全く新しいものを作るときは経験が邪魔になるので、新規案件・プロジェクトは新人が担当することが多いです。

すごく興味があります!また色々お話聞かせてもらいたいなと思います。そのときはよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。


本城 嘉太郎社長
社長プロフィール

株式会社モノビット  本城 嘉太郎社長

オンラインゲームを作りたいという夢を実現するため、2005年にゲーム開発会社を退社して起業。「世界で一番面白いゲームをつくる」を掲げ、多くのゲームタイトルを開発し続けている。

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)
インタビュアー

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)

中国で7年間を過ごした後、日本の高校・大学へ進学。VRを福祉に生かす事業で起業するのが夢。