INTERVIEW

自分の情熱はあえて抑える。社長に必要なのは「保つこと」

LiLo Coffee Roasters
堀田 恭平社長

LiLo Coffee Roasters 堀田 恭平社長

2008年に心斎橋・アメリカ村でヘアサロンを開業。お客様にお気に入りのコーヒーを提供する中「もっと美味しいコーヒーを!」と2014年8月、同ビルの1階に自家焙煎のコーヒースタンド「LiLo Coffee Roasters」をオープンする。

LiLo Coffee Roastersの誕生

タイミングが訪れた

堀田社長は、もともとは美容院をされていたんですよね?


堀田社長

今もプレイヤーですよ。ここ(LiLo Coffee Roasters)の3階で美容師を11年目やっています。4年ほど前に高校の同級生の中村と一緒にコーヒー屋をはじめました。

コーヒー屋をはじめようと思われたきっかけは?


堀田社長

僕は美容師をしながら趣味でコーヒーを淹れていて、中村はお客さんとして髪を切りに来ていたんです。コーヒーの話はその頃からよくしていました。たまたま1階の店舗が空いたときにオーナーから「どんな店舗が入ってもなかなか続かない」と相談を受けて…そのときに「そうだ、今がはじめるタイミングだ!」と思ったわけです。
もともとうちの会社に来ないかという話はしていたんです。同級生ということもあってお互いがもっていない部分を補えるいい関係性だと思っていたので。それで「面白い話があるんだけど一緒にやらないか?」と。

趣味の延長ですよね。でも趣味はお金を払ってするもの、今度はお金をもらってすることなのでギアを切り替えてやらなきゃ、という感じでした。今も美容師をしながらコーヒー屋をディレクションしているという感じです。

はじめにしたこと

なるほど。決断されてからまずはじめに何をされましたか?


堀田社長

まずは役割分担をはっきり決めました。商売やマーケティング、決断が必要なことは全部僕が決めて、現場のコーヒーの味づくりなんかは彼が決めています。
人材のマネジメントも僕。最初に決めたのはこの役割分担をするということと、あとはどこに軸を置くかということ。「楽しいことをやろう!」と決めました。

僕がイメージする起業のパターンは2つあって、1つは社会に対する課題を見つけて起業したいというパターン、もうひとつは楽しいから、自分がやりたいからといった堀田さんのようなパターンがあると思っているんです。


堀田社長

なるほど。

社会で大きくなっているのは課題解決型のように感じて、自分もどちらかというとそっちをしなきゃいけないかなと思いつつ、堀田さんのようなパターンが面白いとも思っています。そこで、堀田さんは社会やお客さまに対してどういう影響、プラスの利益を出せているのかなというのをぜひお伺いしたいです。


堀田社長

なるほどね。僕はそんなに難しく考えてなくて直感で。直感に従って決断して、そこに肉付けしていく感じです。自分たちが楽しく感じることを、小さなコミュニティーからでもいいから周りを巻き込んで一緒に楽しめていけるかどうかを重要視しています。その為失敗で終わらせないように、失敗しても周りが成功したと感じるまで根回ししていくというか。

僕は26歳で美容室を始めたんですが、そのときは有名店で働いていてそこでの自分のポジションやレールは敷かれていました。でももともと「自由に働きたい」という思いがあって美容師になったからレールを敷かれてしまうとできないんです。
僕が目指していたのは「やるときはやる、やらないときはやらない」っていう働き方。だから自分で店をやろうと思ったわけです。好きなことを楽しんでそこそこ稼いでいるサラリーマンより稼いでいるっていう。コーヒーでもそうしたいな、というのが始まりかな。だから趣味の延長で「楽しいからやろう!」というのと同時に、やるなら仕事としてやらなきゃいけない。じゃあ問題点をどう解決していくのか、そのためにどういう店を作るのか。そういう流れですね。

なるほど。好きなことをやりたいという気持ちがあって、じゃあどういった価値を与えられるお店にするか、というポジショニングを考えていったわけですね。


堀田社長

そう、ビジネスモデルづくりです。僕が感じていたのは、専門的なお店は敷居が高くて入りにくい、職人さんがいるから話しかけづらい、といったこと。そうすると裾野が広がらない。
その逆のお店になると今度は職人が育たなかったりスペシャリストがいなかったり。つまり、サービスに特化した「場所を提供するカフェ」になる。それを両方したいよね、と。欲張りだから(笑)。

スペシャリストがいて美味しいコーヒーを出せるけど、親しみやすい空間でコーヒーを楽しめる接客やサービスもできる。そんなお店を作ろうと決めました。両方の価値を提供しつつ発展性がある状態にするにはどうしたらいいんだろう、ということでさっきの役割分担をしよう、という考えに至ったわけです。

なるほど。


堀田社長

初期投資をして焙煎機を買えば豆を安く仕入れて技術料もいただける。そういうことを最初から考えて「ビジネスモデルを作る」ということをやる。そういうモデルでやっていくには店舗だけではダメだから道具を売る。
最初は従業員が中村ひとりだけだから簡単でした。でもいろんな人が働ける会社を目指していくのであればまだまだ課題があるなと思います。

大切にしていること

それぞれの働き方を用意する

いろんな社員が入ってくる中で課題が出てきたんですね。


堀田社長

僕は、出会った人とか働いてくれる人ベースでものを考えるようにしているんです。「5年後、10年後もこの子が働いていけるか」というのを考えるし、人が増えればいろんな人に対応できる会社になっていかないといけない。人にはそれぞれその人のライフワークバランスというのがあるので、それに合わせようと思うと「現場に立たなくても仕事ができるように環境を整えなきゃな」とか「こういう仕事を用意しとかなくちゃな」とか。

従業員の方は年齢やライフスタイルもさまざまですか?


堀田社長

そうですね。だから雇用体系も全然違うし、給料、働く時間も違います。
たとえば「私は責任ある仕事をして稼ぎたいんです!」という人には固定給でミッションを与えて、それに対するインセンティブをつけます。「主婦だけどコーヒーが好きだから働きたい」という人なら、朝早く来てオープン前の準備や管理なんかをしてもらって15時や18時に上がってもらえるようにするとか。

なるほど。


堀田社長

いろんな子に対応できるようにしようと思うと仕事の幅がいる。そういうパズルの組み立てをしている、という感じはありますね。

日々のモチベーション

お話をお伺いして、楽しくやるというスタンスの中にも仕事としての大変な部分があるというのが分かりました。そんな中で、すごくテンションが上がるタイミングや、逆にモチベーションが落ちそうなときがあるとしたらどういうときですか?


堀田社長

「社長のモチベーションは?」って聞かれることはたまにあって、そのときに思うのはモチベーションがないとできないようじゃ経営はできないな、と。社長に必要なのは「保つこと」だと思うんです。だから上がらないようにするという工夫も必要。上がらなければ下がらない。情熱や勢いで行ってしまうと下がるから、逆に情熱を抑えるような精神状態でやっているかもしれませんね。

なるほどです。


堀田社長

僕の仕事は従業員の人生に関わる仕事じゃないですか。月1回面談をしているんですが、そこで変わっていく様子、良くなっている様子が見えたりすると楽しい。そこが楽しみ。そこでしかないかな(笑)。

従業員に対してリーダー的であるっていうイメージですよね。僕もフットサルのチームを立ち上げてリーダーとしてやっているのでなんとなくイメージができます。


堀田社長

自分のやりたいことをやっているというよりも、従業員がやりたいということをやっていけば結果的に面白い会社になるよね、という。ただ、必要なことに目を向けずにこれがやりたいあれがやりたいと言う子もいっぱいいるので、「これをやりたいならこれが必要だよ」とか「どうやって実現していくか決めようよ」と言う役目を僕が日々やっています。それが楽しさの裏にあるしんどさ、向き合わないといけないことかな。向き合うべきことを整理してあげて、見極めて、一緒に階段を上がっていくっていうような。

うちに入る前より今の方がよくなったよね、というふうにしてあげるのが会社の役割だと思うし、よくなったということは会社自体もその子を雇う前よりよくなったということになるでしょ。

マネジメントの方向性

マネジメントについてはどのように考えられていますか?


堀田社長

職業によって特色が違うんですよね。美容師の場合はそれぞれにお客さんがつくので個の力っていうのが大きい。それにそもそも「組織に縛られずにやっていきたい」という思いがあるので、その欲を実現するためのブランディングのやり方であったり、お客さんのサイクルをコントロールするやり方を身につけさせていくという方法。
でもコーヒー屋はまた違って、チームの力をつけていくという方向性でマネジメントをしています。日本人はグループになりやすいので、ちゃんとしたチームを作ろうとすると個々のいいところ悪いところを認め合って、いいところを伸ばしていくようなチームづくりが必要です。

なるほど。職業によって全く違うマネジメントが必要なんですね。


堀田社長

ただ、美容師が考えるサービスとか接客の仕方というのは徹底的に落とし込んでいます。

美容室の接客をコーヒー屋で?


堀田社長

美容師って一人あたり平均すると2時間の施術で1万2000円くらい頂くんです。2時間ずっと一緒にいるわけですが、油断するとその価値をお客様が見い出せなくなって逃げて行ってしまうんですね。そうならないためにはすごく能力がいる。その教育の仕方ってほかの職業と違う独特の教育だと思うんです。カットしながら聞く力もいるし話す力もいる。寄り添う力、引っ張る力、いろんなパターンがある。でも飲食店に行ったときにそういうのって僕はないと思うんです。

確かにそうですね。


堀田社長

お客さんがよろこんでくれるならなんでもしよう、次は今日よりもっとよろこんでもらおう、ということを考えていかないと、毎月1万円も払ってくれない。
コーヒーの場合は1杯300円から500円程度だから毎日来てもらえると当たり前になって怠ってしまう可能性がある。でも美容師と同じ考え方で接していけば全然違うと思うんです。チームでやっている中でも自分のファンをつけていこう、みたいな考え方をさせて「あなたはこういう得意分野があるんだからこういう接客をした方がいいよ」っていうようなことをマメネジメントしています。

堀田社長の「社長資質」

参謀タイプ

お客さまにどう幸福感を与えていくかを常に考えられているですね。そういう考え方ってどこからか指導を受けられたんですか?


堀田社長

なんでしょうね。学生時代からそんなところはあったと思うんです。僕、こんな見た目なのでわりと目立っちゃうんですよ(笑)。でも前に出るよりは人にやらせる方が好きなタイプなんです、そもそも。そういうことばかり考えていたからかもしれないですね。
「お前応援団長やったらいいのに」とか、「お前はこういうキャラでいったらクラスのみんながよろこぶと思うぞ」みたいなことは考えるタイプだったかな。会長とか学級代表とかにはならずに副代表の立ち位置で事を動かすような…参謀系の一番ずるいタイプ(笑)。

いかに人を動かすか、というのを常に考えていたってことですよね。


堀田社長

そうですね。それって僕の中に30人〜40人規模で「いろいろなタイプの人が多ければ多いほど楽しい」「それぞれの特徴があるみんなと一緒に何かをしたい」「それぞれの得意なことをやらせたい」というのがあるってことだと思います。

スモール・イズ・ベター

美容師の技術を生かしているという点以外で、ほかの競合店舗と差別化、独自化できている部分があれば教えてください。


堀田社長

僕、できる限り現場の人に光が当たるようにしたいんですよ。「堀田さんの店」っていう風にしたくないんです。
こんなカード(「このコーヒーは私が淹れました」と書かれたカード)があるんですが、こういうしかけをしたりすることで、いろんな子がいろんなところに出てくるようにしています。

いいですね。


堀田社長

一人ひとりが当事者意識をもてるように、自分でアイデアを出せるように、トップダウンではなく常に自分で考えて動けるように、という感じのことはやっていますね。

なるほど。社員にはモチベーションを意識させるんですね。


堀田社長

そうですね。店舗ビジネスのいいところって、接した人を幸せにしたり元気にしたりできることなんです。オンラインでは難しいですよね。僕は、1対多数に発信するSNSよりも1対1に発信するメールの方がいい、1対1で対話できる電話の方がもっと効果的で、それより何より会って話すというのがいちばんだと思っていて、それができるのが店舗ビジネスのいいところなんです。

それをやるにはこちら側の「1」が誰なのかがはっきりしてないと成り立たないと思うんですね。
大事なのは従業員が元気で楽しくやっていることで、元気や楽しさを与えられること。ここが一番大事。だから店舗に立つ子のモチベーションって必要だと思う。人間って波があるから。
でも僕自身は波をなくさないと従業員の波を上げてあげられない。自分は波をなくしながら、従業員の波がなくなってきたらすぐ上げてあげる、というマネジメントですね。

店舗が増えると難しくなるということはないですか?


堀田社長

そうですね。チェーン展開して大きくなるとできなくなります。
だから僕は「スモール・イズ・ベター」っていうような考え方で会社をやっているかも。スケールでできることもあるけど、小さいけどいろんな人が働けるというのでやってみようかなという考え方で、そこの軸がしっかりしているというのは他のお店にはないところかもしれませんね。その代わり「前職よりも絶対に稼げるようにするし、10年後、20年後のことは僕が責任を取ります」って言うようにしています。

カッコイイですね。
では最後に、起業を目指す学生にアドバイスがあればお願いします。


堀田社長

継続していく、発展していくことを考えてやっていってほしいと思いますね。ダメでもいい経験になった、というのもあるかもしれないけど、僕的には続けていくということが裏切らないことだと思うんです。
結婚式に参加したのにすぐ別れたとかあるじゃないですか(笑)。
お客さんとの関係性もそうで、通っていて1周年もお祝いしたのに潰れたのか、っていうのはね。そのあたりは頭に置いておいてもらいたいところですね。

なるほど。今日は本当に参考になりました。貴重なお時間、お話をありがとうございました。

インタビュアー

森 さん(大阪経済大学 4年)

店舗だけでなく物販やECサイトも運営する「LiLo Coffee Roasters」に興味をもち「ぜひ堀田社長にお話を聞きたい」と、自ら取材を依頼。