INTERVIEW

チャレンジに失敗はない。ただフィードバックがあるだけ

オルウィン株式会社
豊田 匡臣社長

オルウィン株式会社 豊田 匡臣社長

平成19年6月にAllwinを設立。社員研修プログラムの制作や実施、名刺やパンフレットなどの作成を通して、つながりをデザインする機会開発企業。

オルウィンについて

一風変わった研修

今日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、オルウィンさんでは企業向けに変わった研修をされているそうですね。


豊田社長

名刺を作る研修をしています。「研修をします」と言うと構えてしまう人が多いけど「名刺を作りますよ」と言って「やる気ありません」って言う人はいないんですよね。
たとえば木谷くんに「名刺にあなたのことを書いてください」と言ったらどう?

学生で失敗してばっかりで、でもやる気だけはあります、という感じでしょうか。


豊田社長

普通はプラスのイメージを載せたりするよね。面接に来て頑張りませんという人はいない、背伸びする。名刺を作る研修はそれと同じように背伸びをさせる、ということなんです。「名刺を作りますよ」イコール「背伸びしろよ」というメッセージなんですよ。

木谷くんも京大に行くと決めていたわけでしょ?決めたから勉強を頑張った。「まわりが京大行くんでしょ?」って言ったら「もっと勉強しなさいよ」というメッセージになってる。「受かりそう?」って聞かれたら、自分の中に何が残るかというと「もっと勉強しなきゃ」となる。そういった言ってることとその裏に隠されたメッセージが、真剣に働いてほしいし、背伸びした目標を決めようぜっていうメッセージなわけです。

それが名刺を作る研修の意図なんですね。


豊田社長

(社長の名刺を出して)そうするとこうなる。「アドバイスの達人」とか「感謝の達人」とか書いてあるでしょ。「笑顔の達人」っていうのも書いてあるからムッとしていたら「笑顔の達人じゃないんですか」って言われる。これを書くことでムッとしない自分になれる。ひきつってても笑う、みたいなね。

なるほど。


豊田社長

3時間半くらいの研修をするうちに、自分はこうでありたいというのが出てくるんですよ。それでここにあるような(みんなの強みを書いた)ポスターを貼ってもらう。お客さんが来て「◯◯の達人なんですね?」って言われる。そうすると逃げられなくなる、自分がこうあるんだっていうミッションになるんです。僕は研修で「言ったことをやる人が誠実なんだ」って言うんです。言ったことをやろうと努力する人。結果じゃなくてね。

人生の向きを変える仕事

実際、その研修への反応はどんな感じですか?


豊田社長

最初は「こんな研修に何の意味があんねん」と言う人もいます。そこで「あなたはどうしてこの会社に来たんですか?」と聞いたら「嫁が働いて来いって言うから」とか「娘に飯食わさなあかんから」と言うわけです。でも1時間そんなことを言ってても全然面白くない。そうするとある人が立ち上がって「俺は荷主の想いを運んでいる」と言い始めたりするわけです。
そこからだんだんといいことをやろうっていう気持ちの方が盛り上がってくる。最初の1時間は反抗の1時間だけどそれ乗り越えた時に人は前向きになっていく、っていう。

要はデトックスするわけですよ、日頃の不満を。全部吐き出したらいいことやろうという気持ちになる。そういう心理。何の意味があるのかと言っていた彼も最後には「荷主の笑顔を運ぶ」って言うんですから。すごい名言でしょ。

前向きになるにはまず吐き出すことが必要なんですね。


豊田社長

そう。でも全員に響くわけじゃない。「女遊びの達人」と書いたドライバーがいて、社長は怒ったんだけど僕が「絶対に何かが起こるからこのまま作らせてください」とお願いしたんです。そうしたら2ヶ月後に彼の方から「社長、名刺を作り直してください、恥ずかしいんですわ」と言ってきたらしいんです。

恥ずかしい思いをして、それなら今度は何と書くかを一生懸命考えるようになりますよね。


豊田社長

この研修とその後の名刺によって人の方向性が変わるというか、自分はこっちが正しいんだと見つけていく。今までは流れで人生を生きて来た人たちが、自分は大きな男になりたいと決めて、人生の向きを変えてやっていく。ここに携わる仕事が楽しいんです。

すごい。聞いているだけでもすごいです。


豊田社長

実際にやってたら面白いよ。表情変わるもん。睨みつけてた人が優しくなってるよね、というようなこととか。

その人それぞれに、もともとそういう能力が備わってるんです。自分は挑戦しなかったとか、無駄に時間を使ってるという人もいるけど、気付いたか気付かないかが大事。
実際、マイホームがほしいと言っていた人が本当に買ったり、結婚したいと言ってた人が結婚したり。意識することで引き寄せの法則がはじまる。それはそもそもその能力があるってことなんです。

やりたいことの背中を押す感じ。しかも押し方が新しいですね。


豊田社長

俺もこんなことやるとは思わなかった。その人の名刺っていうのは個人のことを書くわけでしょ?なのにブランディングされた会社のデザインで名刺を作っているところがほとんど。アイデンティティが全くなくて会社のブランドで動いていく。

こういう研修をして名刺やWebページ、ポスターにすると「この人と働きたいよね」とか「人間味があっていいよね」ってなりますよね。

会社の雰囲気も分かるかもしれませんね。


豊田社長

そう。「こんな雰囲気の会社がいいな」とか「ここ絶対に暗い会社じゃないよね」とか。
採用文化や企業文化がいいと思って来てくれる人は、その人自身も会社に入ってそういう人になっていきますからね。採用という視点でも大事だと思います。

面接した人を見て入社を決めるとかよく聞きますがそういうことに繋がってくるんですね。


豊田社長

人はね、どういうよろこびがあっても人との関係でしか癒されない。だから今後AIが進んでいくと僕らの仕事は絶対重要度が増してくると思う。人やからね、僕ら。どれだけいろんなことが進化しても。ぬくもりは人でしょ。

確かに。結局そこに行き着きますね。

理想の会社

10年間続けていること

社長は何か日々の習慣にしていることがありますか?


豊田社長

うちの会社では毎朝、「京セラフィロソフィ」っていう稲盛和夫さんの本を輪読します。これは会社に来なくても個人的にも毎朝必ず読んでいます。
1日1項目ずつなんだけど、10年半くらい続けていますね。

10年も?


豊田社長

そう。何回も何回も繰り返して、お経みたいな感じ。
全部で78項目あるから毎回違う文章がくるんだけど、それを今現在の自分と照らし合わせて、働き方として正しいかどうかというのを毎回チェックするようにしています。

かなり面白い習慣いただきました。ありがとうございます。
ちなみに、おすすめの本と映画があれば教えていただけますか?


豊田社長

本はいっぱいありますね。僕の人生をいちばん動かした本は稲盛和夫さんの「生き方」っていう本。あと山崎豊子さんの「不毛地帯」。伊藤忠商事の本でロッキード事件の話とか実際にあった話を全部小説にしてある、めちゃくちゃ面白いよ。これで自分の仕事観って変わったからね。

映画は岡田准一くんが主演の「海賊とよばれた男」かな。起業するにはすごくいいよね。

ありがとうございます。見てみます。

失敗は情報

今まででいちばんの失敗って伺ってもいいですか?


豊田社長

失敗?うちの会社ではね、失敗はない。フィードバックはある。一般的に失敗と言われるとしたら防災事業に力を入れすぎて会社の存続が危ぶまれたという時期があったことかな。

よかれと思ってやることだけが仕事じゃないんだよね。僕らがやっている活動がちゃんと価値として認めらえて対価をもらってはじめて仕事として成立するんだ、ということに気づいた瞬間でもあるんだけど。だからお金を費やしてやったことは失敗と言われるかもしれないけど、うちでは失敗ではなく学びを得た情報、失敗は情報だと捉えています。

社内でも「思いっきり挑戦してくれ」と言ってる。挑戦しない人には怒涛のごとく起こるし、挑戦する人は讃える、と。たとえ失敗してもそれで何を得たかという方が大きいし、何よりもやらない後悔の方が失敗だと思うから。

毎朝そういう話をしますよ「失敗はない、ただフィードバックがあるだけ」。フィードバックっていうのは世の中から「ばかやろう、何してるんだ!」と言われること。「あ、これしょうもなかったんや」って気付けば同じことはしない。やってみないと分からんことがいっぱいあるし、理屈はこうだけど実際やってみたら違うということもいっぱいあるよね。

なるほどです。勉強になります。

究極の幸福提供


豊田社長

今、世の中の副業が労働人口の約二割。副業を許してるのがね。

へぇ、そんなに。


豊田社長

でも本業は雇用契約だからね。たとえ仕事の成果が出なくても毎月20万なら20万もらえる。副業は出来上がって、成果に対して対価を払う。バイトもそうやね。本業は休んでも有給があるけどバイトはもらえない。やったものに対してお金がもらえる。だからどっちに本気になるかというと副業の方。そうすると本業が手薄になる、っていう現象が実際に起こってしまって。理屈上、副業すると人生が豊かになるということになるけど、副業のせいでストレスが溜まって、今うつ病がすごく増えている。

本末転倒ですね。


豊田社長

僕の個人的な意見としては、副業を許すというのは実は事業に対して無責任だと思っているんです。うちの会社に来てもらったら経済的にも精神的にも幸せにしてみせるっていう究極の幸福を提供することを諦めた会社になってくると思っています。

働くことの意義

真剣勝負

豊田社長のマネージメントのポイントを教えてください。


豊田社長

企業は人なり。組織は人の集合体。従業員とのパートナーシップ、大家族主義。惚れさせるだけの大きな器のある人でいること。

お父さんみたい、ってことですか?


豊田社長

うーん、そうやね。2つあるのよ。大家族主義っていうのは互いの信頼信用、家族のような関係ともうひとつは実力主義。家族の甘えが出ると会社がダメになる。親子のような関係でありながら実力主義。自分の力を人のために使える力、単に事務処理が早いとかいうのは事務処理能力、能力主義。じゃなくて実力主義。実力主義っていうのは人に尊敬されたり人のために自分の力を発揮したりとかそういったこと。

実務処理に対する能力が高いだけではダメなんですね。
では、僕は起業を目指しているんですが起業したいなら今すぐやめるべきことってありますか?


豊田社長

これは優柔不断。決断力いるよな。起業、経営って選択やからね。

意識したら変えられるところではありますかね?


豊田社長

怖いよ。これが判断を遅らせる。

松下幸之助の言葉に「真剣勝負」っていうポエムがあるんです。つまり僕たちは真剣、本物の刀で勝負しているんだということ。木刀でやられて骨が折れたけどやり直しがきく、っていうのじゃなくて、真剣だからやり直しがきかない、っていうような詩。
それが優柔不断じゃないっていう意味だと思う。僕自身はそれができてないと思う。覚悟しなきゃいけない。真剣で切られたら文句さえ言える状態じゃない。そこまで覚悟してやれているのか、という話。

怖いけどジャッジが遅れるのもまた命取りになる。難しいですね。

うまくいかないと感じる理由

起業前にはどんな勉強をされましたか?


豊田社長

経営者の本を読みあさった。松下幸之助、稲盛和夫、本田宗一郎、渋沢栄一…

ほかに学生時代できること、やっておくべきことがあるとしたら何でしょうか。


豊田社長

チャレンジ。思ったことは全部挑戦する。学生時代って時間もあって自由だったのに失敗したら嫌とか言ってしなかったことがいっぱいある。社会人になったらチャレンジする機会が少なくなる。いろんなことに制限されていく…いや、本当言うとないんだけどね。会社でやるなと言われたらやりにくくなったりする。学生のときやってないやつはもっとしんどいよ。失敗は情報だから。

うまくいかないなと思ったときの心の対処法とかはありますか?


豊田社長

今の状態は幸せなんや、って思うこと。うまくいってないなと思うってことは何かを目指しているから足りてないなと感じる。この状態は悪くないな、目指してるとしたら幸せやな、と。
幸せだと思うと感謝が出る。親に産んでくれてありがとうとか、家族に支えてくれてありがとうとか。まわりの仲間にだいぶ援助してもらってるよな、っていう思考に変わる。うまくいってないときって人がやってくれないから腹が立つとか、なんで世の中うまくまわっていかないんだ、と恨み辛みになるでしょ、それを逆にする。

たとえば木谷くんはうまくいってないと思うかもしれないけど、2年前の自分は京大に入っていないんだと思うと幸せだよね。っていうこと。京大生になったら勝ちやと思ったわけやろ?

そうですね。


豊田社長

ビジョンは高い方がいいけど、高く設定しているからこそうまくいってないと思う。現実を知るのは大事だけど、誰かに愚痴ったり自分はダメな人間だと自己否定するのはバツだと思ってる。

うちの会社は12期目。10年でつぶれる会社もある中で残っているわけだから。もっとこうしたいって思うのもあるし。まだまだやな、って思う、謙虚にね。謙虚と自己否定は全然違うからね。
今の自分は生きてるし、幸せ。究極は。

誰のための仕事

じゃあ、最後に。事業というのはやはり誰かのためにやっているという感覚が大事と言いますが、本当にそういうものなんでしょうか。


豊田社長

人ってね、自分の存在理由を知りたがるよね。自殺する人は自分には存在価値がないとか言ったりする。自分の存在理由を知りたい。赤ちゃんが泣くのだって応答してほしいから。それが人間の性質なんです。
今、資本主義社会ではこれをベースに生きているわけ。売り上げを上げ、利益をつくり、人を雇用して幸せにするという理屈。

売り上げを上げるためにはお客さんに「ありがとう」と言ってもらわなきゃいけない。社会に役立つとか存在意義を考えたときに、人のため社会のためになるっていうのが必要だと思う。
近江商人の「三方よし」っていう理念を知ってる?「売ってよし、買ってよし、世間よし」。みんながよくなる、それが理想。
うちの社名オルウィンのスペルは「All win」。自己実現できているみんなが集まって意味実現をしていく会社だと思っています。

なるほど。ずっと疑問に思っていたことが腹落ちしました。今日はとても勉強になりました。どうもありがとうございました。

インタビューを終えて

取材前に少しお話させてもらった時、社長の理念感を強く感じていました。
ビジョンや考え方というのをしっかりもっていて、ぜひそういったお話も伺いたいなと思っていました。
インタビューしにいくというより、学んでやる!! という意識が強かったです

取材後に感じたのは、自分自身の変化でした。
事業というのは人のためという意識が大事と分かってはいつつも、身にストンと落ちていなかった私は、豊田社長の言葉を聞いてからかなりそれを実感できるようになりました。
商売というのは道である(武道のようなもの)とお聞きしたときはかなり衝撃でした。
そのように語れる自分を持ちたいなというのを何度も感じました。
今は、熱い想いのもてる事業を見つけたいなと思っています。
また、豊田社長が同じ本を10年も読み込んでいるというのはおもしろいなと感じました。
というのも、それほど読んでいれば、その書いている人自身にさえなれるのではと思ったからです。
ただ、ここも豊田社長とは違うところで、自分が「この人になりたい!!」というぴったりな人物が今現在いない、というかそこまで熱くなれないというのが現状です。
豊田社長の、熱さ・ビジョン・理念、ここが一番の学びどころでした。

木谷 真也さん(京都大学 1年)
インタビュアー

木谷 真也さん(京都大学 1年)