INTERVIEW

変わらない信念のために、社長は進化し続けなくちゃいけない

株式会社デイサービスうららか
住所 和彦社長

株式会社デイサービスうららか 住所 和彦社長

2010年、兵庫県加古川市にデイサービスうららかを開設。居宅介護支援事業所や障害者福祉事業部、訪問看護事業部なども加え、接遇日本一の総合福祉事業を目指す。

起業時のこと

想いと行動

早速ですが、社長が起業を考えられたきっかけを教えてください。


住所社長

起業した理由はふたつあります。私はもともと介護の仕事をしていましたが、ひとつは給料面でこの仕事は未来永劫じゃないなと感じていたんです。それで起業しなきゃダメだなと。
もうひとつは介護事業の社会的地位を上げたいという強い思いがあったことですね。

もっと社会的地位が上がるべき仕事ですよね。


住所社長

そうですね。団塊の世代が後期高齢者に達する2025年問題。これに立ち向かうための介護って担い手がいないわりに給料が少ない。ここをやっていけば介護は日本でリーダー格の事業媒体になれる、というところに目を当てたわけです。
苦しくて高いホスピタリティを求められるのに給料が上がらないという現状を、会社を立ち上げ、ここで働く人たちから発信することで変えていきたいと思った。やるなら今しかない、と思って起業したのが30歳のときでした。

僕も起業したいと考えていますが、まず何をしたらいいのか分かりません。社長は起業までにどのくらいの時間をかけてどんなことをされましたか?


住所社長

半年くらいかけました。6ヶ月間の間に介護事業をされているホームヘルパーの社長にどうやったら起業できるのかを聞きに行きましたね。
あとはお金を借りるために国金(日本政策金融公庫)に相談に行って、税理士さんや司法書士さんに話を聞いてもらって…税理士さんに「不動産屋さん知らない?」、司法書士さんに「行政書士さん知らない?」って相談して、どんどん紐付けしてもらいました。

苦労したこと

起業前後でそれぞれ苦労されたのはどんなことですか?


住所社長

起業するにあたっての苦労はないんですよね。登記すればいいだけですから。借り入れをした段階で返す責任が生じるというのはありますが、これも経過措置がありますからね。
あえて言うならマーケットのことをある程度知っておくというのは大事だと思います。薬屋の横に薬屋を作るのか、みたいなことですね。

起業してからの苦労は2つあって、ひとつは人材の育成。私より年上の人たちがそれぞれの価値観、知識と経験をもって入ってくるわけです。介護って看護師と違って無資格でもできるんですよね。ここが難しい。それでも今、加古川でいちばん質の高いデイサービスをやっているという自負はある。そこまでの品質を確保、維持しようとすると教育がとても難しいですね。

なるほど。


住所社長

ふたつ目は資金繰りです。国金から1500万、彼女から500万、合計2000万円を借りましたが「お金ってこんなにあっという間に消えていくんだ」と思いましたね。4月1日に開業して11月には資金が尽きた。解散の準備にとりかかるよ、って(笑)
税理士さんの使い方、どう相談したらいいのかが分からなかったんですよね。何回も銀行に頭を下げに行きましたもん。ずっとそう。自転車操業。

11月くらいから銀行に行って資金繰りを?


住所社長

やってましたよね、ずっと。そうしているうちに業績が一気に上がったんです。

ぶれない軸と進化する自分

唯一無二の接遇技術

急に業績が上がったのはどうしてですか?


住所社長

そのときに特化していたことがあって——うちの特徴は、私が独自で開発した全国唯一無二の接遇技術をもって介護をしているということです。
デイサービスを利用されたことのある方の中には「若い子に無下に扱われた、やめる、もう行かん!」っていう方が結構いらっしゃる。でも社会性を無視するということは地域のコミュニティに取り残されるんですよね。情報が入ってこないというのはものすごく怖い。社会の風に触れておかないといけないというのは無視できないんです、死ぬまで。定年後に鬱になる人がいますがあれはまさにそう。社会性を維持していくためにデイサービスは絶対必要と、私の中で価値があった。

ケアテクニックとかいうのは正直、どこへ行っても微々たる差しかないです。でも私たちは「うちに来てもう一回ダメだったらやめてください」って言うんです。業績がうなぎのぼりになっていったひとつの要因として「もう行かん!」とやめたような方もうちなら絶対満足させられる、それだけの接遇技術がある、というのがあります。

なるほど、その接遇技術が急成長の理由なんですね。


住所社長

そうですね。このあたりやっていったときに「あそこは違うぞ」「あの人がやめへんぞ」と。おじいちゃんおばあちゃんもだんだん柔軟になっていくんですよ、考え方が。その頃から一気に定員が上がっていきました。

具体的にマニュアルみたいなものがあるんですか?


住所社長

接遇11カ条というのがあって、うちの魂はここにあります。もっと言うと「介護とは何ぞや」という部分を7つに区切って「介護の7原則プラス接遇11カ条」として分かりやすくしています。

それは社長おひとりで?


住所社長

ここにいる専務と一緒に。彼女は看護師の資格をもっているので、介護だけじゃない視点で作れたというのも大きいです。

それをいただくことは可能ですか?


住所社長

これは社外秘です!よく公開してくださいと言われます(笑)

どういう魂をもってやっていくのか。デイサービスの平均利用年数って3年ないんですよね。3年経ったらもう会えない。だから出会ったご縁をね…心の中の想いは外から見えないけどそれを形にしていくというときに、オーナーは分かっている、オーナーだからできる、というのは失くしていきたいんです。

進化し続けるための情報収集

社長は普段、どうやって情報収集をされていますか?


住所社長

私が朝から何をしているかというと、グノシー、スマートニュースなど7つくらいに目を通しています。オンラインサロンに入会することもできるし、名だたる人とつながることもできる。
今、日本がどうやって動いているのかという情報取りはNewsPicksとFacebook、ここかなと思います。

コメントを見て、周りの意見に肩を並べながら考えていけるのがいい。しかもすごく大事なのは、明日はその考えじゃなくなるかもしれない、っていうところです。起業家っていくらリスクをとれるか、そしていかに損切りできるか。そのためにはいろんな考え方をしておかなくちゃいけない。その観点で、プラットフォームとしてこの2つがすごいと感じています。

なるほどです。同席してくださっている専務にもお伺いしたいんですが、社長のすごいところはどんなところですか?


藪西専務

そうですね、私がなぜこの代表についてきたかというと、常に進化し続けているんですよね。同じことをやり続けるのも大事ですが、介護って時代とともに変化していくので先を読んで進化しなくちゃいけない。接遇のように変わらない理念をもちつつ、進化しなくちゃいけないところは進化してる。そこかなと思います。

具体的にどういったところに進化を感じられますか?


藪西専務

常に新しいものを取り入れているところですね。でもただ追いかけているだけじゃない。あくまで接遇を実践するツールとして有効なものを取り入れていく、という感じです。

社長を変えた言葉

社長は人、もの、かね、の中でどれが一番大事だと思われますか?


住所社長

人ですね、完全に人です。以前はこれ、お金だと思ってたんです。これに気づいたのは7年目でそれまでは重きを置いていませんでしたが今は人です。

どういう心境の変化があったんですか?


住所社長

辞めるんですよね、人って。採用コストとか事業を展開したいとかそういうこととはまたちょっと違って…。
知り合いにこういうことを言われたことがあったんです。「僕は足長おじさんをやりたい。自分の社員を幸せにしていきたいよね」って。社員もよくなって会社もよくなっていくことが理想なのにそのへんが追いついて来ないなといったときに、私がパワーを向けている方向がお金だったりした。

また別の人からは「やること全部やってる?」とも言われました。「自分の従業員が辛い、辞めたいって言う。それってめちゃくちゃアンハッピーやんか。事業やる以上、起こり得る想定の範囲内のことだよ。それなのにどうして解決しないまま未来に進んでるの?それなら売ってしまえば?」って。そのときにやれることはやってみようかな、と思ったんです。

社長が考えを変えられて、社員の方も変化しましたか?


住所社長

辞める子は辞めていきましたよね。「今更なに言うの?」って。幹部の半分が辞めました。だから今いる人、新しく入ってくれた人が大事。すごく大事。

専門家レベルでいうと、みんなの仕事は実を見ればすごいんですよね、やっぱり。それが売り上げにどう直結しているかという成果だけを見がちだけど、毎日結果を残し続けているプロセスとかアドバンテージとかそういうところを見てあげないと、ということを今は考えています。

担い手になれるという自負

失敗とリカバリー

これまでの失敗談はありますか?


住所社長

お金です。創業期の話に戻りますが事業計画が甘かった、この1点に尽きると思います。

どうやってブラッシュアップされたんですか?


住所社長

頭を下げて教えてもらいましたよね。
リアリティのある事業計画書を作って、そこと差分が出てきたときにどう行動するかという策は2ヶ月くらい前から先見性をもってやっていかなきゃいけない。私はそれをやらずに着地点ばかり見ていました。6月はこうだったのか、7月はこうだったんだな、と。そうじゃなくて6月はこうなりそうだからという事態を踏まえて、そのリスクの中で行動するべきだった。

結果を見て動いても遅いということですね。


住所社長

そう。そういった失敗を経験しているので、ここの訪問看護は1年で損益分岐点を超える目標でしたが4ヶ月でいけました。マーケティングの中で自分のやろうとしていることがどこにいるのか。マーケティングが合っていれば成功するんですよ。看護者が何人いて病院がいくつあって、といったことがはっきりしていればもっとリアリティのある事業計画書もできたはずです。

そのマーケティングはどうやってとっていますか?


住所社長

いや、これはね、アウトソーシングした方がいい。めちゃくちゃ忖度するんです、自分でやりだしたら。

いい情報だけを見るみたいな?


住所社長

まさに!ほんとにこれは人に任した方がいいですね。いくらでもやってくれるところはありますから。競合がいくつあって、シェア率がどうで、うちの評判なんかも聞いてくれます。

2025年問題をVRで

社長はVRや人工知能についてどう考えられていますか?


住所社長

これは未知数の部分が多くって、だからこんなに面白いことはないと思っています。

VRの時代においていちばんいいなと思うのは緊急時の対応です。緊急、命に関わることでいうと有資格者にしかできないことがあって、VRを通じて緊急の状態をいかにリアルに有資格者に見せられるか、同じ目線で見られたらどうなるかな、と。

それから…先ほどもお話したように社会性を維持することが大事だと思っているのでターミナルの方でもストレッチャーに乗せて連れて来たりするんです。そうすると脈拍といったデータだけじゃなく、見た目の異変をどう感じ取れるかというのが大事になる。そのあたりをVRでできるとかなりすごいと思いますね。「顔色が悪いんです」って電話がかかってきても判断できないですから。

あとはケアテクニックといって、この仕事は人にスキルをずっと教えていかなきゃいけない。でも技術とか模擬ってすごく伝わりにくい。教科書に落とし込めない仕事の奥行きを見せてあげるためにもVRは有効なんじゃないかなと思います。
転倒する瞬間って体験できないでしょ。これをVRでシミュレーションしていくと一気にスキルが上がる。「危うく転ぶところだったね、後ろから声かけるのは危険だね、それなら動ける自分たちが前に出て声をかけよう」とかね。今は絵や写真でやっていますが、声をかけるときは前からと決めているのはなぜか。VRでそういったことがもっとリアルに伝わるようになると思います。

なるほど、すごく勉強になります。ほかにもありますか?


住所社長

訪問看護事業部を立ち上げたときに、私たちは終末期、つまりターミナルケアをやりたいという想いがあったんですね。最期、どういう風に死を迎えるかを見つめていかなければと考えた。
目の見えない人を見えるようにするメガネが話題になったりしていますが、終末期の考え方としてね、私は「捨てろ」っていうんです。ないものはないでいいんじゃないか、と。その代わりになるもの、終末期に必要なのはいかに安心・安全・安楽か、どれだけ穏やかに過ごせるか、というのがあります。

動かない足で飛行機に乗ってどこか行こう、という時代じゃない。そうするとVRによって行きたい場所が目の前にすぐ現れる、時間を無駄にしない、余生の濃密にすごす。こういうことの実現につながるんじゃないかと思います。

僕もまさにそういったものを作りたいと思っています。


住所社長

あともうひとつ、仕事には間接業務と直接業務というのがあって、間接業務というのは請求とか記録とかそういったことですね。で、本来の価値は直接業務の方にあるわけです。美容院では頭を触っている時間が長いほど満足度が高くなる、という理論と一緒で、いかに間接業務を省いて直接業務に時間を使うかが課題。そうするとツールを使っていかないといけない。今はどちらかというと間接業務で潰れているので、それを減らすためにも有効になると思っています。

新たなプラットフォーム

最後に。起業したいという主体性のある学生にチャレンジさせてみたいことはありますか?


住所社長

あります、あります。
私は、介護と看護の差ってものすごく激しいと思ってるんですね。それはどういうことかというと、介護でやっていることは看護でもすべてできるけど、看護でできることを介護ではできない。資格があるかないかによってできることの差が大きいんです。国もここをなんとかしようとしていますが厳しい。現場を抜けて研修に行かせられるような施設があるんかな、という話です。

看護師さんってすごく高いスキルをもっています。血や肉を扱うこの看護に介護がどれだけ近づけけるか。認知症の方がより在宅で過ごしやすくするためにはやっぱり介護の仕事を看護でできるような仕事により近づいていかないといけない。命というよりも血肉を扱うということに対してより専門的な知識をつけることが必要になる。ここのところの大きなプラットフォームを作っていかなきゃいけない。つまり、「介護って簡単なんだよ」っていうことを伝えながらより看護のレベルに近づけていく。こういうプラットフォームを作ってほしい。

難しい課題ですね。今日は本当に勉強になりました。住所社長、僕がVRにもっと詳しくなったときに一緒にやってもらえますか?


住所社長

やりましょう、今すぐやりましょう!せっかく知り合ったんですから。社員にも「ひとりでやるな」って言うんです。人の力をいっぱい使ってやったらいい。世の中に変革をもたらしたい、という熱をもった経営者はいっぱいいますから。
日本全体の問題をどの企業でどういう立ち回りでやっているか。これからは人材もシェアしてみんなでやっていかないといけませんね。

インタビュアー

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)

中国で7年間を過ごした後、日本の高校・大学へ進学。VRを福祉に生かす事業で起業するのが夢。