インタビュー

INTERVIEW
2019.07.05

アイドル自動生成で注目を浴びたGAN。その先の未来を創造するために、「単なる技術」では終わらせない

株式会社データグリッド 岡田 侑貴社長
アイドル自動生成で注目を浴びたGAN。その先の未来を創造するために、「単なる技術」では終わらせない

GANという技術に目を付けたきっかけ技術を軸に課題を解決するスキーム

まず、なぜこのクリエイティブAIという事業を始められたのかがすごく気になります。事業を始めたきっかけを教えていただけますか?

岡田社長

京都大学に在籍していた2015年頃に、博士課程の先輩にデータ生成技術の「GAN(ギャン)」という技術を教えてもらい、その技術が非常に面白くて衝撃を受けました。※GAN(Generative Adversarial Network、敵対的生成ネットワーク)

その技術が世にできたのが2014年で比較的新しい技術なんですが、実際に注目されだしたのが2017年頃なんですね。その当時、割とブレークスルーになるような技術が出だしてその辺りを注目していたら、このGAN技術を実社会のアプリケーションとしてまだ誰も深く着手していない領域だということが分かったんです。この面白い技術を”単なる技術“として終わらせるんじゃなくて、「世の中の役に立つ形にしたい、社会実装したい」と思ったのがきっかけで会社をつくりました。

技術をお金にしよう、つまり技術から起業するという考え方ですよね。これって実はとても難しいんじゃないかと思うんです。問題を解決するために取り組む方が、起業へのイメージが付きやすいというか。

岡田社長

もちろん、課題があった方がいいのは間違いないですね。たとえばWEB系のベンチャーは基本課題ベースでやっていて、こういう課題があるからこういうサービスを作るっていうのが基本的な流れだと思うんです。問題解決のための取り組みですよね。ぼくらは確かにその逆で、先に技術があって課題を探しにいったような形ではありました。ある意味そういうところは苦労したというか、実際にこの技術をどういうところに適用するのかということを考えて取り組んでいくのは、最初は大変でしたね。

ただ課題だけでやるっていうのも結構大変で、例えばこういう課題があるからそれを解決するWEBサービス作ろうっていっても、それって語弊を恐れずに言えば誰でも取り組めるんですよね。要は問題が先にあることが分かっているから、既にみんなそこに参入している。その瞬間はブルーに見えても、そのサービスでユーザーが10万人突破した!みたいなときに、いきなり超大手のソフトバンクが参入したらどうでしょう。飯島さんは「アキッパ」という会社はご存じですか?

いえ、知らないです。

岡田社長

個人間での駐車場のシェアリングサービスを作った会社です。自分の家の駐車場を、希望している誰かに貸せるという仕組みですね。車で会社に行っている間は自宅の駐車場が空くので、その時間帯は500円で誰でも利用できる、というような。アキッパは資金調達額が数十億という勢いで、シェア1位なんですけど、2018年にはソフトバンクが参入してきて競争は激しいようです。駐車場シェアのニーズが高まってその分マーケットが広がることは良いとは思いますが、お金のある大企業が参入してくると、市場争いは激しいだろうなと思いますね。

今お話ししたことはあくまでも一例ですが、「お金さえあればできる」というものは結構怖くてですね。お金を持つ企業は世の中にいっぱいあるので、そういうところに目をつけられると一気に攻められるっていうのはあると思います。これは考え方の一つだし、それで成功している会社ももちろんあるので、この考えが絶対に正しいとは思ってはないです。とはいえ、僕は「技術」の優位性は参入障壁をかなり高めることができるという認識はあります。

なるほど。技術から市場開拓(マネタイズ)するには、具体的にどんな取り組み方になるんでしょうか。

岡田社長

要は「技術」って何かを解決する「手段」なわけですよね。解決するべき課題を探せば技術が提供できるということで、一つひとつ課題探しに取り組んでいくという感じです。すでに顕在化している課題というよりも、まだ大きく露出されていない課題を探したり。そこを真剣に取り組むと、技術自体に価値が出てきてそれが自然にお金に変わっていくという開拓の仕方です。
我々としても今それをやっている途中なんで、えらそうにどうこう言える立場じゃないんですけどね。持っている技術を軸にいろんな業界の課題を見つけにいって「この課題だったらこの技術で解決できるよね」という感じで、サービス化まで開発しているところです。

創業当時は技術を使ってキャッシュフローを改善

課題を探しに行って技術を当てはめてみる、という取り組み方なのですね。でもそれだと最初の方は大きなキャッシュは期待できないのでは……。

岡田社長

そうですね。最初はいろいろ大変ではあるんですが、資金調達はそこまで難しくはないんです。たとえば融資や補助金ですね。調べればいろんなお金の調達方法は出てくるんです。株を使った資金調達もしましたし、自分たちの技術、要はそのAIを使った開発っていうといくらでも需要はあるんです。
初期の段階では企業から依頼された仕事を我々が持つ技術で対応すれば資金を作ることもできるんです。最初から技術メインで売り出して億単位っていうと簡単じゃないと思いますけど、こういうことを少しずつこなしていけば、創業初期に数百万円程度を生み出すことははそんなに難しくないと思います。

アイドル生成に着手した理由

御社はクリエイティブAIを駆使して「アイドル生成」という部分に目を付けられていますよね。最初の質問に似通ってしまうんですが、そこに目を付けた理由はなぜでしょうか。

岡田社長

まず「クリエイティブAI」とは一般の人向けの単語で使っていて、要はGANに代表される「生成AI」のことを指しているんです。このGANっていうのは汎用的な技術で、いろんなところに使えるんですよ。GANを平たく言ってしまえばAIを駆使して、「それっぽいデータを生成する技術」といったところでしょうか。
例えば広告業界向けに広告を自動生成するツールを作ったりとか、ゲーム業界向けにゲームのキャラを自動生成できるツールを作ったりとか。いろんなところに応用はできるんですけど、馴染みのない一般人からしたら「技術」ってやっぱり小難しいからよく分からないんですよね。実は一番最初に我々が苦労したのは、どうやって技術分野に馴染みのない人達にこの技術を伝えるかっていうところでした。
口頭で説明しても誰も理解してくれないんです(苦笑)。まぁ、なんとなくは聞いてくれているんだけど「ふ~ん」って言って終わり。サービスでも同じだと思うんですけど、こんないいサービスがあるよって言っても現物がないとなかなかイメージがつかなくて、なんとなくしか理解できない。でも目に見える現物があると「こういうことか!」ってすごく理解しやすくなるんですよね。難しい言葉を並べるよりも、一つ例をアウトプットして見える化する。そうすればお客さんもついてくるし、お金も集まってくるんです。
そこで「アイドル生成」です。自分たちが持っている技術をどうすれば世の中に伝わりやすくなるのかをいろいろと考えた結果、「アイドルを生成する」ことに行き着きました。自分たちにとっても技術的なチャレンジではあったので、研究開発としても前向きに取り組みました。アイドル生成は大変でしたが、そこから僕らの技術の説明がしやすくなって、各メディアで取り上げてもらうことも増えました。

AIブームと今後の展望

岡田さん自身は、AIについてずっと勉強されていたんですか?

岡田社長

京都大学の情報学科に入っていたのでずっと勉強していました。AIの研究室だったので、そこで学んでいたのがそもそもの始まりですかね。完全にAIブームの時代だったので、自然と関わっていました。でも、起業した一番の要因はタイミングだと思います。

タイミング的に今がチャンスだと思って、この事業を始められたんですね。

岡田社長

そうです。

僕の個人的な質問なんですが、今後のAIってどういう展望になっていくのか気になっています。

岡田社長

一般的なAIという話でですか?

そうですね。

岡田社長

社会的にはAIブームなので、期待値がおかしくなっているとは思います。できること、できないことがグチャグチャで「AIは何でもできる」という錯覚に陥っている感じはしますね。ただ技術的には”できるライン“というのは決まっているので、今後はもう少し適正なラインに落ち着いていくだろうなと思います。

今はバブルみたいなイメージでしょうか。

岡田社長

完全にバブルです。

それが終わって落ち着いてくるとどうなるのでしょうか。

岡田社長

AIに対する概念が明確になって、有効な部分には使われていくし、そうじゃないところでは淘汰されていくと思います。将来的にどこまで進化するかは、わからないですけどね。ただ、少なくともAIが世界をのっとる!みたいなことにはならないと思います。数十年後でもそのような世界はこないと思います。一千年後は分からないですが。

インターネットが普及したみたいに、 AIがインフラ化していくことはありますか?

岡田社長

普通にあると思います。今後はAIを搭載した様々な機能が実装されてくるだろうなと。ただ、ドラえもんはできないと思います(笑)。

そうなんですか!僕の知り合いで汎用人工知能が好きな子がいて、今後の展開に期待しているみたいなんですけど難しいのでしょうか。

岡田社長

汎用人工知能を目指してる研究者もいますが、今の技術ではドラえもんはできないですね。専門家に聞いても「それは無理だよね」って普通に言われると思います。それこそ千年後は分かりませんが。

ちょっと残念ですね……。では次に、今後の御社のビジョンをお伺いしてもいいですか。

会社のこれからのビジョンと、大切にしていきたいこと

岡田社長

AIの研究開発はやってきたので、今後はいろんな分野に応用してアプリケーションと社会実装していきたいです。技術が一歩先の何かを解決したり、もっと世の中の人を楽しませるような付加価値が付くところに持っていけたらと思っています。

人を楽しませるような技術ってワクワクしますね。では、今までで一番大変だったことや、一番の障壁に感じる部分はどういったことでしょうか。

岡田社長

大変だと感じるのは、組織をつくることでしょうか。今も完璧な状態ではないですし、課題もたくさんあります。僕たちは「技術」で戦っていこうとしているので、技術力が高いメンバーを揃えるのはもちろんのことですが、事業って結局は「人」が作っているものなので、どれだけ強い組織を作れるかというのは重要視しますね。

強くて良い組織を作ることが我々の課題であり、優先順位も高いです。もちろん、研究開発の大変さはいつだって当たり前にあるんですけどね。ビジネス面はこれまで僕が全部1人でやっていましたが大変だったので、今はそのビジネス側で活躍できる人を採用しようかなって動いています。

研究しながらビジネスを自分で進めるとなると、大変ですね。でも、最初はビジネスの知識とかないですよね。それはどうやって身に着けるのか、教えてもらってもいいでしょうか。

岡田社長

勉強したらすぐわかりますよ、大学の勉強のほうが100倍難しいですから。数学の勉強の方が絶対に難しいですよ(笑)。ビジネスは少し工夫して勉強をすれば誰でも知識ややり方を身につけられます。会計の知識や営業の知識などはもちろん必要ですし、最初お話したみたいにお金の集め方とか銀行や補助金の制度なんかも調べて知っていくことが多いです。「考えて行動する」ことが一番大事ですね。やっているといろんな事がわかってくると思います。
自分たちが今やりたいことに対してどういうアプローチがとれるかということを、その都度考えていくことが重要ですね。

なるほど。考えながらやっていく、やらないと分からない事ばかりですもんね。それでは最後に、ビジネスを続けるうえで必要だと感じる部分を教えてください。

岡田社長

これが必要だな、と感じる部分は「覚悟」ですかね。創業者の気持ちがどれぐらいのものかは重要です。会社って大変なことも困難なこともあって当たり前で、上手くいかないときに心が折れているようではやっていけないと思います。結局は、どこまで成し遂げたいものを持てるかによると思います。

僕も全然そんな偉そうに言える立場ではなく、まだまだこれからやっていく立場です。起業したい、何か自分が思うことに挑戦してみたいといういい人材がいたら、いずれ一緒にやっていける仲間になれるといいなと思います。

ありがとうございました!


岡田 侑貴社長
社長プロフィール

株式会社データグリッド  岡田 侑貴社長

飯島 悠斗さん(京都大学 工学部 建築学科 2年)
インタビュアー

飯島 悠斗さん(京都大学 工学部 建築学科 2年)