INTERVIEW

よほどの技術がない限り経験を積んだ人には負けるんです。そうすると熱い思いしかない。

株式会社K-FIRST
田中 健司社長

株式会社K-FIRST 田中 健司社長

学生の頃、就職活動のあり方に疑問を感じリクルーティングの会社を起業。
25歳のときにオフィスやテナントビルを専門にした不動産管理会社「K-FIRST」を起業する。

現在の事業について

K-FIRSTのビジネス

今日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。まずは起業のきっかけをお伺いしたいのですが、田中社長はなぜ不動産事業で起業をしようと思われたのでしょうか。


田中社長

うちには「社会から見放されている不動産を社会から認められる不動産へ」というビジョンがあるんですが、僕がたまたま親から引き継いだ不動産があって、その多くがテナントビルでしたが管理会社に専門性がなく、空室率も50%くらいでした。それでほかの管理会社も見てみましたがどこも同じような感じ。マンションやレジデンスと違って、オフィスやテナントには専門の管理会社がないんだなと思って立ち上げたのがきっかけです。

あともうひとつあったのは、不動産業界には封鎖的なところ、悪い風潮があって、僕はその中で何かを変える一手を取りたかったというのもあります。

なるほどです。具体的にはどんなことをされているんですか?


田中社長

古くて稼働していないビルの30坪ほどのフロアを4〜6坪に小分けして、スモールオフィスとして貸し出すんです。なるべくコスパのいいリノベーションをして。このやり方で10年ほど決まっていなかった物件に2ヶ月で借り手がつきました。

仕組みとしては、エントランスとフロアの工事費が約1000万円かかるところをうちでまず負担してリノベーションします。6部屋のうち5部屋を貸し出すことができれば10%、つまり100万円のインセンティブが入るというものです。決まったら工事費の1000万円とこの100万円を合わせて支払ってもらいます。初期費用を0にして、家具なども全て負担することですぐに入れるという付加価値を提供しているわけです。「部屋が埋まるまで代金はいただきませんよ」という仕組みでかなりリスクヘッジをしているわけで、自分としてはかなり自信をもった事業なんですが今はまだ単発的に案件を貰っているような状態です。

何が原因なんでしょうか?


田中社長

ビジネスモデルが弱いというのと、やっぱりお客様のルートが弱いのかなっていうのがありますね。

社長の打開策

そのルート強化のために何かされていることはありますか?


田中社長

ルート探しのためにもともとやっていたのはオフィス街を歩いて気になった物件の謄本を取得するやり方です。そこに所有者の住所が書いてあるので自社のパンフレットと提案を一緒に送るんです。

提案を?


田中社長

入らない物件って、そもそも管理体制が悪いんです。だから、ゴミ箱はこうした方がいいだとか、この管理体制だと入らないからこうしましょうといった改善案を写真や手紙で分かりやすくして一緒に送るんです。それでも相手にしてくれるのは100分の1の人。怪しまれるんです。これってなかなか広がらない。
それで行き着いたのは「オーナーさんが信頼している人からの紹介じゃないと厳しいな」という結論です。だから銀行さんとか保険の方、オフィス仲介で管理はしてないところなどにアプローチしています。

それと並行してホームページを新しくしたり個人のブランディング、セミナーや新聞記事を書いたり、来春には本も出す予定です。思い立ったらとりあえず実践する、というタイプなので色々やってみています。

すごいスピード感ですね。


田中社長

そう、一回やってみてから考える、だめならやめる。特にベンチャーはスピード感が命だと思います。他人のアドバイスをもらうだけで動かなければアドバイスをくれた方も「なんだ、やらんのか」っていう感じになりますから。

なるほど。それでは「いつか取り組みたいと思っているけど今はあまり手をつけられていない重要なテーマは何か?」と聞かれたらどんなことが浮かびますか?


田中社長

今はエントランスとフロアだけリノベーションしていますが、ゆくゆくは一棟丸ごとの企画をしたいですね。使えなくなった社宅をフルリノベーションして小さな商業スペースを作るとか。飲食店でいま流行っているのは内装まで作って貸し出すスタイルです。企画からやって設備まで準備した上で貸してあげる。設備とか買うのは大変でしょ?そういうことをしていきたいです。

起業にいたるまでのこと

起業にあたっていちばん大切なこと

次の質問ですが、田中社長は学生の頃にも起業されていまよね。その時はどの様な行動をとりましたか?


田中社長

行動ですか。起業って、僕は行動の前にまずは想いが大事で、想いがないなら起業するべきじゃないなと思っているんです。学生の時に起業したのも就職活動をする中で課題を感じたことがきっかけでした。
就職活動って大学の就職センターに行って、みんなが同じサイトに登録して、同じ格好をして企業ノックを何回した?とか。「これって何が大事なんかな?」と。僕はそんなにいい大学じゃなかったからいい大学の子と一緒に説明会を予約したら僕だけフィルターをかけられる。そういうのに課題を感じた。だから僕は「打倒・リクルート」くらいの気持ちをもって起業しました。

僕も就職活動で同じような思いをしたのでよく分かります。
起業された会社はどんな会社だったんでしょうか?


田中社長

最初は個別紹介をしていました。個別紹介ってすごく儲かるんです。でもそれは人を商品と見ているからもともとの課題や目指していたところと違うなと思ったんですね。それで、僕がやっていたモデルは地域密着型の合同説明会を開いて地元の学生を集めるというもの。すごくマッチングがいいんです。その学生たちをどこから連れてくるかというと、社団法人を作っていて、著名人の講演会を年に何回か開催して学生の会員を集める。

別で集客するわけですね。


田中社長

そうです。それで自分の事業に引っ張ってくる。いろんな大企業の支援者さんのおかげでできましたが、逆にそれで身動きがとれなくなったという部分もありました。何かしようとする度に「これ誰かに迷惑をかけるんじゃないか?」と考えるようになるから。それでスピード感をもってやっていけなくなった。だから今はカタチを変えてやっています。

経験した苦労、人脈づくり

会社が軌道に乗るまではどんな感じでしたか?誰に相談しましたか?


田中社長

1年間は食べられなかったですよ。はじめはがむしゃら。熱い想いしかないから。飛び込みで営業して、徹夜で資料を作って。風呂も入ったかな?(笑)というくらい。1年経って10万くらい給料がとれたときには涙が出ましたね。

ちょうどみんなが就職する時期なので焦りももちろんありました。その頃は他人と比べていいか悪いかという判断軸しかないから、著名人の講演会をやっていることで自分を大きく見せたりして…でもそれって自分がすごいわけでもなんでもない。そういう焦りみたいなものがしんどかったですね。
そんな時、ある経営者に言われたんです。「みんな違う山を登ってる。大人数で力を合わせて登る山もあれば自分の能力で登れる山もある。違う山を登っているのに比べる必要はない。なんで他人と比べるの?」と。それで楽になりました。
若い時って「自分はこんなに頑張ってるんだ」っていうのを見てもらいたいじゃないですか。でも、それがしんどかったし経済的にも辛かった。

その経営者の方のような人脈はどのように作られたんですか?


田中社長

今はちょっと考えが違いますが、起業当初は人脈のある人のところに行っていました。例えばコンパをしようと思ったら友達を連れてきてくれそうな子、面倒見がよさそうな子のところに行きますよね、それと同じです。人脈の強そうなオールドの方に行くというのもひとつの手段。事業が安定的で後輩育成をしたい人っていっぱいいると思うんです。僕は基本的には想いがあったら助けてくれる人がいると思う。でもさっき言ったように動きにくくなるという弊害もあります。

難しいですよね。圧倒的な技術があれば別だけど、賢いといっても上には上がいる。そこをどう捉えるか。就職している子より長けている部分もあれば長けていない部分もある。自分の弱さを受け止めることが必要なように思います。

起業するにあたってはやはりその長けている部分、自分の強みを生かした方がいいですよね?


田中社長

うーん。強みっていっても知れてるんですよ。よほどの技術がない限り経験を積んだ人には負けるんです。そうすると熱い思いしかない。変にプレゼン資料を作って賢ぶるより素直でいた方がずっといい。だから僕はどうしたら可愛がられるかというのを常に考えた方が事業は伸びるように思います。賢いだけって可愛くない。やっぱり助けてくれる人ありき、ひとりの力って知れているから周りの力がないと会社って上がっていかない。

社長からのアドバイス

まずやるべきこと、やってはいけないこと。

僕はVRにとても興味があって、VRを福祉に生かす仕事で起業したいと思っているんですがどう思われますか?


田中社長

それならVRを広めたり、プラットフォームを作り上げることをやってもいいかもね。思いとしてはいいと思います。

中国語ができるのでその強みを生かして起業するのであれば貿易関係でスタートしていくべきか。ちょっと悩んでいるところもあるんですが。


田中社長

どうだろうね。自分の強みを生かせるからというだけなら、僕はやめた方がいいと思う。稼げるからというだけでやるのもやめた方がいい。日本語も中国語も使えるという人はいっぱいいるわけだから。でも「日本と中国の架け橋になりたい!」という強い想いがある、というのならやるべきだと思うし。

ずっとそう思ってきたんです!日本と中国をつなげたい。それで商社に入ろうと考えていましたが、できれば自分でやりたい。


田中社長

それならやってみたら?VRはいま高いから安くできるようにリース会社と組んで月額いくらで使えるようにするとか、使ってみてよかったらという成果報酬にするのも一手ですよね。

実際そういったことを考えた経験がないんですが、詳しい方を紹介してもらえますか?


田中社長

もちろん。でもまずは本当にそのモノを作れるのか。3万円のものを中国でなら1万円で作れますとか。それから「自分としてはこれをこんな風に広げたいんです」というアイデア、意見がないとダメだよね。それがあればみんなアドバイスをくれると思う。本当にVRをやりたいなら中国でいくらで作れるか試作してみたらどう?
持論がないと人脈を広げるのって難しいよ。自分の想いが固まる前に紹介されても意味がないでしょ。

そうですね。もっと想いを固めて、アイデアを考えたいと思います。
もう少し伺ってもいいですか?


田中社長

もちろん、いいですよ。

ありがとうございます。社長が目標とする経営者は誰ですか?逆にこう言った経営者はダメだなと思う人はいますか?


田中社長

あー、学生の時に目指していた経営者と変わってきたという実感はありますね。早稲田さんも僕をすごいと言ってくれるけど、それはだんだん変わってくると思う。今は「業界を変える、社会を変革する」という人に憧れをもちます。大きいお金を動かしているとかは興味なくて影響を与える経営者。秀吉会に入っている理由もそうです。

秀吉会?


田中社長

秀吉会というのは経営者の勉強会です。「秀吉会」っていうくらいだから入会基準が「天下一の志がある人」っていうもので、そういう人しか入れないんですよ。だからまずは自分がどこで天下一を目指すかを発表しなくちゃいけない。自分もそこを目指すし、目標のある人に憧れるわけです。

事業家は投資家ではない。

起業にあたって有益な情報はどのように得られていますか?


田中社長

有益な情報ね。情報を集めることも大事だけど、秀吉会にいる人はみんなチャレンジし続ける人ばかりで「自分もチャレンジし続けないとここにいられないな」と思う。若い人はどんどんチャレンジしていく必要がある。上の人を脅かしてなんぼの世界、自分も若い人にこわいなと思うこともあるし、自分も上の人を脅かさないといけないと思ってる。
そのためには素直でいること。自分の弱みを素直に理解しないとダメ。そしてスピード感を早く。そういうことの方が大事なように思います。

いや、僕にもお金に重きを置いていた時期があって、めちゃめちゃ言われたんです。「秀吉会には“樽に一杯の水を持ち寄って、混ざった水をそれぞれ持って帰ろう”というコンセプトがある。君は一杯の水をすくって帰るだけやんか。きみは事業家じゃなくて投資家だ、来んといてくれ!」ってね。

事業家じゃなくて投資家。事業家って本当はどういうものなんでしょうか。


田中社長

うん、案件の連続は事業ではない、事業をシステム化するのが事業家だ、と僕は思ってます。仕組みとして回っていくのが事業。今やっていることも事業と呼べるまでにはモデルがまだ弱いんだと思う。
秀吉会は僕にとって本当にありがたい会だし、還元していかなくちゃと思っています。早稲田くんも頑張って!プラットフォームが出来上がるのを楽しみにしています!

ありがとうございます。今日はとても勉強になりました。本当にありがとうございました。

インタビューを終えて

田中社長がおっしゃっていた「想い」と言うのは、今、自分が考えているよりはるかに大切なものだと感じ取れました。起業をしたいと言いながら、明確な理由やどう社会に変化をもたらせたいか、という想いがなかった。

自分の考えの甘さを痛感しました。そして、チャレンジし続ける気持ちや、スピード感を大切にしなければならないことも勉強になりました。

社長は何度も、お金のために起業するのではなく、自分のしたい事に対する想いを突き詰めればお金は自然とついてくると仰っていました。その言葉を自分のテーマとして、起業を目指す中で大切にしていきたいと思います。

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)
インタビュアー

早稲田 遊さん(立命館大学 4年)

中国で7年間を過ごした後、日本の高校・大学へ進学。VRを福祉に生かす事業で起業するのが夢。

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